ヨハク木工舎

2020/12/26 01:16

今回は僕が木地師になる前に取り組んできたことをお話したいと思います。

うつわを作り始める前も、木が大好きで、木に関わる仕事をしてきました。


・国産材(日本の木)の利用促進

「SDGsと日本の木を使う理由」でも少しお話しましたが、ヨハク木工舎は国産材(日本の木)を使うことにこだわっています。木地師になる前は、ほとんど有効利用されていない日本の広葉樹(特に小径木*細い木のことです)を活用するための方法の研究や、利用促進を中心に活動してきました。



▲チップにされる小径木


例えば、太くて大きくて、誰が見ても立派な木というのは、家具にも使えるし、うつわにも使えるし、住宅の建築材にも使えます。でも、細くて曲がったような木だと、90%以上はチップにしかなりません。何十年と育った木がチップにしかならないというのは、実にもったいないと思います。そんな小径木でも、集成材にしたら家具にも使えるのではないかとか、フローリングだったらどうだろうかとか、実際に製造にも立会い、製品として品質に問題がないか、コストはクリアできるか、など様々な課題へ挑戦してきました。



・染物(色素の活用)


それから、小径木でも材利用ではなく、色や香りなど副産物の利用ができないかと、染物や、樹液の抽出にも取り組んできました。


ヨハク木工舎でも使うヤマザクラは、煮出すと赤い色素、ケヤキからは黄色い色素が抽出できます。これを利用して、桜色と黄色のリバーシブルハンカチを作ったこともあります。



▲キハダの樹皮で染めたスカーフ


木は樹種によりそれぞれ異なる色味の色素を持っている(厳密には同じ樹種でも個体差がかなりある)ので、この木からはどんな色が抽出できるだろうか・・・と実験しながらワクワクしたものです。



・樹液(食への活用)


それから、イタヤカエデやウリハダカエデなどから樹液を抽出し、煮出すことでメープルシロップを製造することにも挑戦しました。驚くかもしれませんが、みなさんが購入するカナダ産のメープルシロップも、基本的には樹液を煮詰めるだけのものです。ですので結構簡単に自家製メープルシロップを作ることができます。



▲ウリハダカエデから樹液を採取



▲出来立てのメープルシロップ



▲コーヒーに樹液を入れると、ほんのり甘くて美味しい!


ただ、冬の一時期しか樹液を採取できないこと、40Lの樹液を煮詰めて1Lのメープルシロップしかできないので、非常に効率が悪く大規模に生産活動しないと、とても商業的には成り立たないこともあり、それ以上進めることはできませんでした。でも、趣味として続けていきたい、という思いはあります。


これまでの取り組みをざっくりとお話してきましたが、何が言いたいのかというと、「木には素晴らしい可能性がある」ということです。僕は可能性をとことん突き詰めていきたいし、知り得た情報はできる限り、みなさまにも共有したいと思います。


木を知ることは、うつわの背景を知ることにつながります。知れば知るほど愛おしくなるはずです。